Parsley,sage,rosemary,and thyme の意味は?

上記の言葉は謎とされていて、明確な意味を答えた人はいないようだ。
チャイルド博士の編纂した『イングランドとスコットランドのバラッド集』の中でも説明がされていない。

その本の中では、この歌の元になった「妖精騎士(Elfin knight)」のバリアントが14紹介されているのだが、その中の一つのバリアントの一箇所にだけ、これが出てくる。このサイトの「スカボローフェアの源流」参照。

ただ、それ以外のバリアントの中でよく似た言葉が同じ位置で出てくるのが2種ある。
そして、最近、ニコニコ動画にある人が上げたスカボローフェアの古いバージョンに、さらに違う形のがあったので、今まで分かってる形、計4種のものをまとめて説明を試みた。

その動画では、Savory sage,rosemary,and thyme と歌っている。
前後の文句はあまり変化はないようだ。savory は美味しい、といった意味。

A.4つのバリアントでの使われ方

1.バリアントMの最初の4行

As I went up to the top o yon hill,
 Every rose springs merry in't' time
I met a fair maid,an her name it was Nell.
 An she langed to be a true lover of mine

試訳
あの丘の上に登っていってたらね、 
 「どのバラも季節になれば楽しく芽を出す」
綺麗な娘にあったのさ、その子の名はネル
 彼女は私の本当の恋人になりたがったのさ
(以下、無理な要求を私の方からだす言葉が続く)

o は of、an は and の弱い形、lang は long の古い形、merry は現代では形容詞だけだが、過去においては副詞もあった。

問題は、in't'。
これが in't なら、in itの略、in t' ならば、in the あるいは、in that と解せるようだが、両側に ' があると意味不明。
ここは、in t' の誤植だと見なすことにして、in the time その季節には、という意味だと解する。

で、他の三行が過去形なのに、ここだけ現在形なので、これは前後とは直接繋がらず、二人のどちらかのセリフ、あるいは歌の文句だろうと思う(多分彼女の方から誘ってる言葉)。つまり、古い形でも、ここは他とは違っていた、という事になる。

2.バリアントHのやはり最初の4行

Come pretty Nelly,and sit here down by me
 Every rose grows merry wi thyme
And I will ask thee question three
 And then thou will be a true lover of mine

試訳
来て、かわいいネリー、僕の側に座って、
 「どのバラもタイムと一緒に楽しく育つ」
君に3つの質問をしよう、
 そして、君は僕のほんとうの恋人になるんだよ
(以下はやはり無理な質問、糸も針も使ってないシャツの事とか)

wi は with の短縮形

ここでも2行目だけ、他と違って浮いてる。これも上と同様、セリフか歌の文句だと思う。この場合は、僕のか彼女のか判断し辛いが、彼女が何か言いながら寄って来たのだろう。rose と thyme は二人の比喩。全体として、言葉使いが前のよりも現代風に近い。

3.ニコニコ動画のもの
Savory sage rosemary and thyme
  美味しいセージに、ローズマリーとタイム、

4.Parsley,sage,rosemary,and thyme という現行の形。



B.これらの4種の意味の変遷

この順序は、そのまま古い形から現代のも形への変化を表していると考える。

1. Every rose springs merry in't' time
2. Every rose grows merry wi thyme
3. Savory sage,rosemary,and thyme
4. Parsley,sage,rosemary,and thyme

つまり、最初は、「どのバラも季節になれば楽しく芽を出す(=誰だって年頃になれば恋が芽生える)」といった意味のちゃんとした言葉だったのだろう。それは前後の文とと直接は繋がらないが、状況的には繋がっている。

それが、time を thyme に変えた形が現れた。一種のギャグで、 rose に合わせて、同じ植物の thyme に変えて二人を象徴し、恋が育つ、といった意味に変えた。それがバージョン2。(roseもハーブとして使われる事がある)

で、さらに語中の rose と merry を繋げて、thyme と同じハーブの rosemary にしてしまった。さらに空いた所に、同じハーブの sage を入れて、頭韻を踏ませて、every と語感が似ている、savory を入れた。それがバージョン3。

ただし、2と3の間には、ちょっとした飛躍があるので、何か途中のミッシングリンクがあればいいのだが。

で、さらに、ハーブで統一という事で、parsley を入れたのが、バージョン4。

ただ、バージョン3と4はもう前後の行からは意味が離れてしまっていて、1行目の質問をいなす、あるいは受け流す意味合いで使われるようになったのだろう。サイモンとガーファンクルの歌の場合は、妖精あるいは魔物の質問を受け流すためのおまじない。→「魔界から呼ぶ声、スカボローフェアの解釈」参照

こんな形で出来たのではないだろうか。

ちなみに、これら4つのハーブが象徴するのが、勇気だとか貞節だとかだとする説がよく見られるが、私はその説は全く採らない。なぜなら、何かそういった深い意味があるのなら、他の歌や詩、あるいは日常生活の場で使われていてもいいはずなのに、全く見あたらず、イギリス人でさえ明確な意味を答えられない、という状況になるのはおかしいから。

上記のように、最初は意味ある言葉だったのが、語呂合わせのような形で変容していき、ついには、おまじないのような意味の取れない言葉になったのだと思う。日本の童歌や子供の歌なんかにも似たような語呂合わせとかある。これはそういった種類の言葉ではないだろうか。

※ 他の似たようなバージョンをご存じの方は、是非ご教示お願いします。

kifuru

(2013/1/19)

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