スカボローフェア(Scarborough Fair)の解釈
(09/9/6〜09/10/30補足部分追加〜10/12/26記事追加〜11/8/22修正等、16/2/22リンク追加)


1 この歌について
2 全体訳
3 詠唱の部分の補足
4 民謡部分の歌詞
5 「パセリ、セージ、ローズマリーにタイム」とは?
6 旅人と魔界、冗談歌
7 なぜ、魔界の歌に反戦歌を重ねたか


※ 和訳、文法関連の補足(10/30追加)

Link 「妖精騎士(Elfin knight)のバラッド」、スカボローフェアの源流(11/9/3)


1.この歌について

サイモンとガーファンクルの大ヒット曲ですが、この歌には様々な解釈があるようです。
元々はイギリスの古くからの民謡で、その歌詞が謎めいている上に、サイモンとガーファンクルが自作の歌詞(詠唱 Canticle)の部分を重ねた為に、更に分かりにくくなっています。

歌詞自体も、歌詞カードやネットの各サイトで色々と異なる部分があり、これが完全なオリジナルの歌詞だと言えるのは無いようです。
もともと民謡として様々な形(バリアント)があったものなので仕方がないのですが、一応、サイモンとガーファンクルの演奏から、こう歌ってるだろうと判断したものを、以下のように決めてみました。

取りあえずその歌詞と試みの訳を書き、その後にこの歌の私の解釈を書いています。
伝統的な歌詞(A)の部分は左側に、それに重ねられた詠唱(B)を緑色で右側に。
一部、原詩にコンマを入れている部分があります。
訳は、基本は行に合わせた直訳風、ただし意味をはっきりさせるために言葉を加えたり、意訳的にしている部分があります。


     
2 全体訳

                     
 A                                     B .  

第1連

Are you going to Scarborough Fair?
(Parsley, sage, rosemary and thyme)
Remember me to one who lives there
She once was a true love of mine

スカボローフェアに行くのかい?      
 (パセリ、セージ、ローズマリーにタイム)
そこに住んでいるあの人に伝えてほしい
かつて私が真の愛を捧げたあの人に

第2連

Tell her to make me a cambric shirt                      
On the side of a hill in the deep forest green  
 (Parsley, sage, rosemary and thyme)                   
Tracing a sparrow on,snow-crested brown,  
Without no seam nor fine needle work                  
Blankets and bedclothes,a child of the mountains
And then she'll be a true love of mine                   
Sleeps unaware of the clarion call
                           
薄い布地のシャツを作ってくれるようあの人に伝えてほしい   
深い緑に包まれた、丘の中腹で、
 (パセリ、セージ、ローズマリーにタイム)                  
 雀を追いかけ続けて、茶色の羽に頭の白い奴をね
縫い目も無く細かな針仕事もしてないシャツをね          
毛布と寝具の中、山の子供は、
そうすれば再び、真の愛を捧げることができるだろう        
召集ラッパの音にも気づかずに眠る

第3連

Tell her to find me an acre of land                       
On the side of a hill, a sprinkling of leaves
 (Parsely, sage, rosemary, and thyme)                
Washes the grave with silvery tears
Between the salt water and the sea strand              
A soldier cleans and polishes a gun
Then she'll be a true love of mine

1エーカーの土地を見つけてくれるようあの人に伝えてほしい 
丘の中腹で、わずかな木の葉の
  (パセリ、セージ、ローズマリーにタイム)                
  銀の露だけが家族の墓を洗い清める
海と海岸との間にね                               
  兵士となった子供は銃を磨くばかり 
そうすれば再び、真の愛を捧げることができるだろう   
 
第4連

Tell her to reap it in a sickle of leather                
War bellows, blazing in scarlet battalions
  (Parsely, sage, rosemary, and thyme)            
 Generals order their soldiers to kill             
And to gather it all in a bunch of heather             
And to fight for a cause they've long ago forgotten  
Then she'll be a true love of mine

革を鎌の形にして刈り取りをするようあの人に伝えてほしい  
戦は轟き、紅の軍隊の中を燃え上がる
  (パセリ、セージ、ローズマリーにタイム)             
   将軍は兵士に殺せと命じる
そして、短いヒースの束の中に全部入れるようにと      
 長い間思い出すことのなかった大義のために戦えと
そうすれば再び、真の愛を捧げることができるだろう

第5連

Are you going to Scarborough Fair?
(Parsley, sage, rosemary and thyme)
Remember me to one who lives there
She once was a true love of mine

スカボローフェアに行くのかい?      
 (パセリ、セージ、ローズマリーにタイム)
そこに住んでいるあのひとに伝えてほしい
かつて私が真の愛を捧げたあの人に



3 詠唱の部分の補足

第2連Bの2行目、3行目はこのままだと意味が取れないので、コンマを入れて、挿入句があると見ました。
snow-crested brown は、sparrow にかかる形容詞句で脚韻を揃えるために後に置かれたと解釈しています。

また同じ2行目の on は前置詞ではなく、tracing に続く副詞と見ます(〜し続ける、の意味)。
前置詞と見るとそれが掛かる言葉がはっきりしないので。brown の代わりに ground にしている資料もあって、それだとなんとかいけるかもしれませんが、意味がおかしくなります(CDでは、brown と聞こえます)。

仮に、"Tracing a sparrow on snow-crested ground" だとすると、「頂上に雪のある土地で、雀を追って」といった意味になるかと思いますが、これだと、1行目の、深い緑の丘の中腹で、という場所の説明と重複、矛盾するし、on の後に冠詞が必要になるはず。
on が、Blankets まで掛かっているとしても意味が取れません。
ただ、ここはよくわかりません。取りあえず、上の訳にしておきます。

 ※ 頭の白いスズメの例、http://abikoyacho.org/topics/20090312.html、部分白化というらしいですが。
   
同じ第2連の  clarion call というのは、現代の用法では、「(政府や教会などの)上部組織からの、動員、決起などのなんらかのアクションのための呼び掛け」、といった意味で使われてるようですが、うまい訳語が見つからないので、この語本来の意味と思われる、「召集ラッパ」にしました。call というのは、軍事用語で「召集」の意味があります。

第3連の the grave は、定冠詞がついているので、第2連の山の子供の家族の墓、子供は兵士になり(a soldier)、家族は全員殺されている、という解釈です。

全体の意味としては、
第2連、美しい自然の中、平和でのどかな山村に遊ぶ子供、そこへ突然戦火が近づき、戦への呼び掛けが行われる。

第3連、同じ丘で、木の葉の露以外に洗う人もいない墓と銃を磨く兵士。村は襲われ、家族を殺された子供は兵士になる。

第4連、戦いは始まり、こういった兵士からなる戦意昂揚した軍隊に檄を飛ばす将軍。「長い間思い出すことのなかった大義」とは、外国勢力の排除、悪政を布く政府の打倒、など。

明らかに反戦的な内容で、当時のベトナム戦争について言っているのでしょう。

ベトナム戦争で米軍と戦ったベトコンは、実体は中ソの支援を受けた北ベトナムの正規軍だったわけですが、当時は世界的に、腐敗した南ベトナム政府とそれを支援する外国の軍隊に抵抗して民衆が蜂起したもの、と理解されていました。この詩もそのような前提に立ち、反政府勢力からの呼び掛けに呼応するベトナムの民衆の側の視点で書かれていると思います。

ただ、こう解釈してしまえば、Bは分かりやすい詩となります。
問題は、Aの部分で、またなぜこれにBを重ねたか、です。



4 民謡部分の歌詞

ざっと1連から5連まで説明すると、
1,5連は、何者かが、スカボロフェアに向かう旅人に対し、そこに住んでる女性に言づてを頼む、
あるいは宜しく言ってくれと頼んでるわけです。
remember me to〜 はそういう意味。
それに対して、旅人はまともに答えず、「パセリ、セージ、ローズマリーにタイム」というだけです。

また2連から4連は、その言づての内容で、実行不可能な頼み事の連続です。
縫い目の無いシャツ、海辺に広大な土地、切れない鎌での収穫・・・

もう一度恋人になりたいのに、実行不可能な要求を出す。
つまりは、恋人になれない、なることはないという事が前提のようです。
そして、それに対する旅人の答えも、「パセリ、セージ、ローズマリーにタイム」。


5 「パセリ、セージ、ローズマリーにタイム」とは?

これを、スカボローフェアーの市で売ってたハーブだろうとか、愛や誠を表すものだろうとかいうのは、あまりに的を外しすぎだろうと思います。
他のものも売ってただろうし、恋人に捧げるのは普通は花でしょう。

これらのハーブは今は薬味として料理に使われるわけですが、かつては薬草として医療に使われていました。
そして、細菌やウイルスを知らない時代は、病気や怪我から身を守ってくれる薬草は、災難や悪霊からも守る力があると考えられていたようです。
ドラキュラに対するニンニクがそうですね。
そして、この Parsley, sage, rosemary and thyme は悪い霊から身を守るためのおまじないになっていたらしいのです。
詳しくは、→parsley,sage,rosemary and thymeの意味は?

それでは、なぜこの言葉がこの歌に使われているのか。
それは、問いかけている存在が、森に棲む悪霊(あるいは妖精、魔物)で、この世のものではないからです。



6 旅人と魔界、冗談歌

この歌には、問いかける存在X、それを聞く旅人、スカボロに住む女性の3者がいます。
Xはなぜ直接女性に会いに行かないのか。それはもはや魔界の者になってしまって会えない身だからです。
では、なぜ旅人は何も答えないのか。答えてしまったら魔界に連れて行かれるか、殺されるからです。
だから、おまじないの言葉だけを固く繰り返すだけなのです。
この手の民話はよくあります。魔物の問いに答えてはいけない、と。

日本の雪女伝説では、雪女と言葉を交わすと食い殺されるとか、
ギリシャの吸血鬼伝説では、吸血鬼の呼び掛けに答えると死んでしまうらしい。
だからそこの住民はドアを一度ノックされても出ないとか。

返事をする、言葉を交わすというのは、その存在と関係をもつということで、運命の駒を一歩進める事になるのです。


魔物は執拗に問い続けます、そのうち何か反応するかもしれないと期待して。
「そんなの無理」とか「こうすれば・・・」とか言うのを待っているのでしょう。
全てが実現不可能な問いかけなのは、その方が却って反応しやすいということなのでしょう。

また、逆に実現可能な問いをして、それを持って来られても困るということもあるでしょう。
だって魔物だから。まともには会えない。
彼女をも魔物の世界につれて行ってしまうことになる。
回答できない質問をして、自分が置かれた絶望的な運命を確認しているのかもしれません。

あるいは、もしうっかり、「そんなの無理だよ」とか答える人を見つけたら、そいつを魔界に引っ張り込んで、代わりに自分は現実の世界に戻れるのかもしれない。
こういうのはよくありますね、映画なんかで。


ただ、これには別の解釈があって、恋人や仲間同士の軽いやりとりを表す冗談歌だろう、というものです。
相手を困らせるような無理な要求をして、聞き手はそれを"Parsley, sage, rosemary and thyme"とおまじないを言って受け流す。
うっかり答えようとすると、逆にやり込められる。

  「海と海岸との間に1エーカーの土地? ああ出来るよ。砂浜を掘ってね、周りを壁で囲めばいい」
  「下から海水が湧いてくるでしょ!」
  「・・だから深く掘ればいいだろ」
  「どうやって掘るの?」
  「・・・・・・」(産業革命前のことでした)

  「縫い目の無いシャツ? できるよ、立体編み機を使ってね」
  「まだ発明されてないんですが」

  「革で穀物を刈り取るって? 出来るよ、恐竜の皮膚の化石を使えば刈り取れる」
  「皮膚の化石なんてまず無いし、仮にあったとしても、それは既に”石”であって、”革”ではありませんが」

ま、詰まらない冗談ですが、実際、そういう遊びに使われただろうと思います。答えの出せない謎々遊びですね。
オリジナルの民謡の方はそういう謎の質問が延々と続くようです。

確かに、民謡だけを考えるなら、冗談歌の可能性は高い。
きっと色んな人が面白がって、次々と謎な歌詞を作っていったのでしょう。
おどろおどろしいだけの民謡なんてないだろうと思います。
何か楽しみや面白みの要素がないといけない。

しかし、このサイモンとガーファンクルの歌の雰囲気と全体の構成は、そんな解釈とは相容れません。
反戦歌を混ぜているのですから、軽口説はこの場合は無理でしょう。
魔界から問いかけている歌と見て作ったと思います。



7 なぜ、魔界の歌に反戦歌を重ねたか

それは魔界に行ってしまった人を、戦争で亡くなった犠牲者(とりわけ兵士)と重ね合わせたからでしょう。
戦いに倒れ、向こうの世界に行ってしまった兵士達と見たのです。

スカボローの市に向かう旅人と、山中をさまよう悪霊。
賑やかなアメリカの故郷の街に帰る兵士と、ベトナムの山中に倒れた兵士。

亡くなった兵士が帰還する兵士に向かって問いかけます、

  故郷に帰るのか? 彼女に伝えてくれ、かつての恋人に・・・・

異世界に住み、もはや会うことができない定めになっても、気持ちは伝わってきます。
帰還する兵士は、死んだ兵士の無言の思いを受け止めながらも、ただ黙って帰っていくしかありません。

アメリカからベトナム戦争に出征した兵士は50数万、戦死者は5万8千人。
数知れぬ戦友関係があって、生と死の別れがあったはずです。
他の戦争同様、死んだ戦友の叶わぬ思いを胸に抱いて、多くの兵士が帰路についたことでしょう。
そしてその間にも戦争は荒れ狂い、家族を殺され兵士になる子供が現れている、
この歌は、そういう状況を表現しようとしたのだと思います。

2009/9/6 kifuru

(2016/2/22追記)
ベトナム戦争での、銃殺執行兵士を歌ったダーククダックス「消えない顔」のファイルをアップしました。 → ページ




以下10月30日追記
和訳、文法関連の補足

A.民謡部分

1.a true love of mine の訳について

 これを「本当の恋人」などと訳すのは、日本語として抵抗があります。
じゃあ、ウソの恋人とかいるの? ってことになります。まあそういうのもあるのかもしれませんが。
この中の mine は、「my +名詞」のことで、この場合は、mine=my love(s) となります。
英語で love というのは、「愛、愛の対象」といった意味で、またこの場合の愛の対象は、人でも神でもペットでも、趣味、芸術なんでもかまいませんし、一つに限定されるものでもありません。時によって変わることだって当然あります。だから、詳しく言えば、「私のいくつもある愛の対象のなかでも真実の愛の対象」ということになるでしょう。そういった意味を込めて、「真の愛を捧げた人」としています。また「彼女はかつて私が真の愛を捧げた人でした」と文の形のまま訳すと、文章が切れてしまう感じになるので、前の行に繋がるように訳しています。

2.Without no seam nor fine needle work 

 これは、元の民謡の歌詞は、Without any seams 〜となっていたようで、「どんな縫い目もない〜」となり、この方が「論理的」には正しい表現となります。この歌では、any のところが no になっていて、二重否定となり肯定の意味?となりますが、英語で二重否定はしばしば、「ただの否定」あるいは「否定の強調」として扱われます(特に口語で)。

ジーニアス英和辞典の例文 He doesn't know nothing about it.「彼はそのことは全然知らんよ」

この歌詞の場合、肯定の意味でとって、「縫い目が無いわけじゃないシャツ」としても只の普通のシャツになって、わざわざ詩として表現する意味が無いので、否定表現と解するしかありません。口調や音譜上の問題で変えたのでしょう。



B.詠唱の部分

  こちらは問題有りすぎですが。オリジナルの歌詞がはっきりしないのでどうしようもありませんが、出来る範囲内で。

第2連
1.On the side of a hill in the deep forest green      深い緑に包まれた、丘の中腹で、
2.
Tracing a sparrow on,snow-crested brown,        雀を追いかけ続けて、茶色の羽に頭の白い奴をね
3.
Blankets and bedclothes,a child of the mountains    毛布と寝具の中、山の子供は、
4.
Sleeps unaware of the clarion call             召集ラッパの音にも気づかずに眠る
                           
第3連
5.
On the side of a hill, a sprinkling of leaves       丘の中腹で、わずかな木の葉の
6.
Washes the grave with silvery tears               銀の露だけが家族の墓を洗い清める
7.
A soldier cleans and polishes a gun            兵士となった子供は銃を磨くばかり 
 
第4連
8.
War bellows, blazing in scarlet battalions                  戦は轟き、紅の軍隊の中を燃え上がる
9.
Generals order their soldiers to kill                    将軍は兵士に殺せと命じる         
10.
And to fight for a cause they've long ago forgotten 長い間思い出すことのなかった大義のために戦えと
 
第2連

1行目はあまり問題がないようです。
forest green は、これだけで「暗い深緑色」ですが、前にdeepもあるので、「森」のニュアンスをも示してるのかもしれません。

2行目は、上に書いた通りですが、歌詞カードでは、a の所が of  になってるものもあるようです。
ただ、 Tracing of sparrow on 〜 とすると語法としておかしい事になります。
まず、数えられる名詞 sparrow が、冠詞も複数形s も付かず裸で使われていること。これは通常あり得ない用法です。そういう使い方をするのは、人の肩書き・地位、go to bed,by planeのような慣用的な用法、食事や季節、時間関連など非常に限られた場合です。
また、この形の場合、tracing は名詞(または動名詞)となりますが、文の中での扱いが難しくなります(主語か、目的語か、など)。3行目頭にも名詞が来ているので、これだと解釈のしようがないと思います。tracing a sparrow 〜 だと、現在分詞と見て分詞構文と考えて問題ないわけですが(〜して、などと訳せばよい)。    
       
 
3行目は、blankets の前に何か前置詞がないとおかしいわけですが、演奏を聴いても他の音が重なっていて聞こえません。独立した挿入句として考えるしかないかと思います。

4行目、clarion callは、大概の英英辞典には上記に準じた説明があるのに、英和辞典ではほとんど説明がされてないのは、一体どういう訳なのか不思議です。研究社の新英和大辞典(第5版)、ジーニアス、ライトハウス、その他手元にあるもので全く説明がありません。

ちなみに、ネット上の goo Wikipediaでは、

"A clarion call is a powerful request for action or an irresistible mandate.〜以下宗教や政治での用法など"
(クラリオンコールは、 行動への強力な要求、あるいは、逆らうことの出来ない命令〜,mandate というのは、職権を持つものによる正式な指示のこと)

英英辞典での clarion call  の意味は、
ロングマン現代英英辞典やLongman advanced American Dictionary では、"a strong and direct request for people to do something"
Oxford Concise English Dictionaryでは、"a strongly expressed demand for action"
The new Oxford American dictionary"では、"a strongly expressed demand or request for action"
コウビルド英英辞典では、"a strong and emotional appeal to people to do something"
マクミラン英英辞典では、mainly jounalizm として、"a strong public request for people to take action"など

最大の英英辞典OED(第4版)では、なぜかclarion call の説明は無く、call について、
"A summons or signal sounded upon a bugle,trumpet,etc"とあります。
(ビューグルやトランペットなどで告知される召集命令あるいは合図。summonsというのは、召還、召集、出頭命令のこと)。

新和英大辞典で「召集ラッパ」を引くと、bugle call とあります。bugle もクラリオン同様、トランペットの仲間なので、同じ形での表現となります。クラリオンはかなり古い楽器のようで、今ではこの熟語でのみ、比喩的な使われ方で残っているのでしょう。

(私見ですが、OEDに用例が無いという事は、この熟語は近年ジャーナリズムの世界で使われ始めた物なのかも知れません。だとすると英和辞典に採用されてないのも理解出来ます。)

第3連   

         
5行目の最初が1行目と同じなので、第2連と同じ場所を示していることになります。
         
6行目は直訳すると、(わずかな木の葉が)銀色の露で墓を洗う、となります。tear(s)は、涙以外に、水滴や露など、涙状のものをも意味します。ここでは当然木の葉に付いた露となります。
grave は、もしこれがただの墓なのなら、a を付けるか複数形にするはずだし、墓一般について言っている所ではないので、やはり前の連の子供に関するものと見たいと思います。またわざわざ「木の葉の露で洗う」と言う以上、それ以外に洗う人はいないのだろう、しかし、墓が作られているのだから、家族の誰かは生き残っているのだろう、という解釈です。
         
7行目の a soldier がその生き残った少年だということになります。しかし、戦いに気持ちが行っていて、墓を洗うこともない、と。
これを、村を襲った米軍側の兵士ととることも可能ですが、その場合は、一人と言うことは考えにくく、複数形になるはずです。

第4連

8行目、bellows を名詞の複数形と見て、「ふいご」(炉に付けて風を送り火力を強める装置)ととって、戦争を起こすシステムを比喩的に「戦争のふいご」と表した、と取ることも考えられますが、その後に続く、blazing (燃え上がって)があるので、うまく行かないでしょう。blazing の主語は当然、war bellows になりますが、「ふいご」はあくまで「燃やす」為の装置で、「燃える」ものではないので。ここは、war が主語で、bellow (轟く、thunderの類義語)が動詞、その後が分詞構文と見ます。

scarlet に特別な意味があるかどうかは不明です。共産主義を示すなら red を使うはずだし。怒りなどで頬を紅潮させた、というニュアンスがあるので、その意味での使用かもしれません。あるいは、古い時代に兵士の正装に使われてた色なのでそちらの意味かも。スターウオーズで帝国側の儀仗兵?が身につけてましたが。

8行目、9行目に出てくる、batallions(大隊、軍隊),generals,soldiers といった軍隊関連の言葉は、米軍などを指すともとれますが、その前2連がベトコンなど民衆側を指しているようなので、しかも、その直前に、少年がなったと思われる a soldier があるので、これもベトコン側を指すと見るのが自然でしょう。もし視点が変わったのなら、それなりの言葉が無いといけない。

10行目の「大義」もベトナムの民衆側から見た(と作者が想定している)大義。
これを、もう誰も覚えていないような意味のない大義、などと否定的に捉えるのは不適切だろうと思います。戦いが長く続いている、ということが前提ならばそういう解釈もありえますが、この詩においては、戦いは始まったばかり、という印象を受けます。また、将軍達が兵士に戦う理由として提示しているものなので、無理でしょう。
       
ベトナムの場合フランスに植民地支配され、その後南側は米国によって対共産主義の防壁として傀儡政権のような形で存続していたわけで、長い間真の意味では独立していなかったと見なすことができます。少なくとも作者はそう考えて、独立や外国勢力の排除、腐敗した政府の打倒といったことを、「長い間思い出すことのなかった大義」と表現したのでしょう。
またここは、現在完了形に、過去を表す long ago がかかる、という不正規な形になっていますが、意味は明らかなので特に問題にはならないでしょう。

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